大判例

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東京高等裁判所 昭和25年(う)4583号 判決

然し乍ら、警視総監は警察法等の法令に基礎を置く警視庁基本規程によれば、警視庁の各警察区に置かれている警察署の署長を指揮監督する権限を有し、警察署長は上司の命を受けその警察区域内における警察事務を掌理し、警視総監からその署に命ぜられた部下の職員を指揮監督する権限を有することになつていることに鑑み、且つ、警察署に附属する留置場が所謂代用監獄たり得ることの監獄法第一条第三項に明定するところであるに徴し、被告人に対する訴訟書類の送達方式につき、刑事訴訟法第五十四条の準用する民事訴訟法第百六十八条に所謂監獄の長とは、右所謂代用監獄についていうときは、留置場の附属する当該警察署の署長は勿論その上位にあつてこれを指揮統括する警視総監をも指称するものと解するを相当とする。而して神田警察署が東京都警視庁の警察区に置かれた警察署で、其の署長が警視総監の指揮監督を受けているものであることは、裁判所に顕著な事実に属するところであるから、同署の署長が同署の留置場である所謂代用監獄の長であると共に警視総監がその長であると謂わざるを得ない。記録によれば原審は神田警察署の留置場に在監する被告人古谷高利に対する詐欺被告事件の送達を千代田区霞ケ関一ノ一ノ一所在の警視庁の刑事部押送係を送達場所として同警視庁に在居する警視総監に宛てて為したところ、その不在のため事理を弁識する巡査山本春喜に交付したことが明白であるから、前段の説明に照らし、これをもつて不適法な送達とは言い難い。況んや、被告人に対する訴訟書類の送達は被告人に対し、現実にこれを交付した事実がある限り、訴訟法の命ずる送達方法によらなかつたからといつてそれが不適法な送達となるわけのものではないから、当審において警視庁及び神田警察署に電話をもつて紹介して得た電話聽取書の記載に徴し明白であるように、被告人はその在監中の神田警察署において所論昭和二十五年二月二十四日の起訴後間もない同年三月一日現実に所論の起訴状の謄本の交付を受けたものである以上起訴状の謄本が公訴の提起があつた日から二箇月以内に送達されなかつたとして、公訴の提起が効力を失つたとする趣旨の所論はこの点においても既に採用するに由がない。論旨は何れにしても理由がない。

同控訴趣意第二点について。

公訴の提起後における弁護人の選任は、弁護人と連署した書面(所謂弁護届)を差し出してこれをすることになつていることは、刑事訴訟規則第十八条の明示するところではあるが、その選任は、それが同一罪種に属する公訴事実の個別的選任でない限り、右所謂弁護届の差し出された後、新らしく同一罪種の事実につき、公訴の提起があつた場合、当該被告事件が既に右弁護届ある被告事件と共に一旦併合審理されることになつた以上仮令その後において当該裁判所において分離して審理されることになつたとしても、該弁護届をもつて選任された弁護人は右前者の被告事件についても当該裁判所の審理について弁護権あるものと解すべきを相当とする。このことは公訴の提起前に選任された弁護人についても妥当する。今これを本件について見るのに、各弁護届によれば、恒次史郎は昭和二十五年五月二十二日、石川勝次は同年二月二十七日(所論に三月三十一日とあるも所論の錯誤と認める)何れも被告人古谷高利より、前者は同被告人に対する詐欺被告事件につき、後者は同被告人に対する詐欺被疑事件につき、それぞれ弁護人として選任されたことが明白であつて、同被告人はその孰れもが一般的に同被告人に対する詐欺事件につき弁護の依頼をしたもので、同被告人に対する個々の詐欺事件を特に個別に区分して選任したものでないことが明らかである。而して原審は昭和二十五年六月十日主任弁護人恒次史郎立会の上公判を開廷して、同年二月二十四日(昭和二十五年刑(わ)第九二一号)及び同年五月二十四日(昭和二十五年刑(わ)第三一六二号)にそれぞれ公訴の提起のあつた被告人古谷高利に対する同一罪種たる詐欺被告事件を併合して審理する旨を宣し、同公判期日及びその後の各公判期日に少くとも右主任弁護人(原審第五回公判期日には弁護人石川勝治も立会つている)においてその有する弁護権を行使したことが明白である。果して然らば、前段の説明に照らし、被告人に対する右各被告事件につき弁護人なくして開廷審理した違法ありとする所論は採用するに由がない。尚お、原審の昭和二十五年六月十日附公判調書(第四回)によると、被告人古谷高利がその身体を拘束されなかつた趣旨の記載のないことは洵に所論の通りであるが、公判調書に被告人の身体を拘束しなかつた趣旨を記載することは法律の特に要求しないところであるのみならず、原審が右公判の開廷中被告人古谷高利を拘束した事実はこれを窺い得る検察官又は弁護人の保証書の提出なきは勿論記録を通覧するも右事実を認むるに足るものあるを見ないことに徴し、所論公判調書に被告人古谷高利がその身体を拘束されなかつた趣旨の記載がないからといつて、敢てその身体を拘束したものであるとすることはできない。論旨亦理由がない。

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